神々——人が神になる国
神話の骨格(これだけで各社の説明が読める)
- 伊邪那岐・伊邪那美——国と神々を生んだ夫婦神
- 天照大御神——太陽の神。弟の乱暴に怒って岩戸に隠れ、世界が闇になる(天岩戸神話)。伊勢神宮に祀られ、皇室の祖とされる
- 須佐之男命——荒ぶる弟神。追放された先で八岐大蛇を退治する
- 大国主大神——国を造り、そして天の神に譲った(国譲り)。出雲大社
- 建御名方神——国譲りに最後まで抵抗し、敗れて信濃へ逃れた神。諏訪大社
神話の系図——誰が、どの社に祀られているか
実線=神。破線=その神を祀る社。
⚡人が神になる例
- 応神天皇 → 八幡神(全国約4万社とされる)
- 菅原道真 → 天神(約1万社とされる)。政争に敗れて流され、死後に都で天変地異が続いたため、恨みを鎮めるために神として祀られた。その神が、今は学問の神として受験生に祈られている
- 平将門——朝廷に反乱を起こして討たれた武将。神田神社(東京)に祀られている
→ 敗者・怨霊を神として祀るという発想が、日本の神社を理解する鍵になる。
誰が祀られているかが分かったところで、次はこの地図の色分け——格式の話。
格式——神宮・大社・一宮・二宮、そして名社
この地図は神社を5つの色で塗り分けている。4つは、このサイトの外で、歴史のそれぞれの時点で定まった格式や社号(定まった時代はそれぞれ違うので、各節で説明する)。1つはこのサイトが決めたもの。その違いから始める。
地図のマーカー・「?」の比較窓と同じ色とアイコン。
神宮(この地図に24社)
「神宮」は誰でも名乗れる社号ではない。皇室にゆかりのある神、または天皇そのものを祀る社に、勅許によって与えられる。
ひとつの目印がある。ただ「神宮」とだけ呼ばれる社は、伊勢神宮ただひとつ。正式名称に「伊勢」は付かない。他はすべて地名か天皇名を冠する——熱田神宮、鹿島神宮、明治神宮。
ただし格が一律に高いわけではない。伊勢神宮は二千年、明治神宮は1920年の創建。神宮という社号は、古さではなく皇室との関係で決まっている。
大社(この地図に24社)
最もひっかかりやすいのがここ。「大社」には別々の2つの意味がある。
ひとつは社格——明治から戦後まで、国が神社を等級で管理していた時代の官幣大社・国幣大社。もうひとつは社号、つまり名前としての「〇〇大社」。
戦前、「大社」といえば出雲大社ただ一社を指した。他の社が「大社」を名乗り始めたのは、戦後に国家管理が廃止されてから。社格と社号は別物で、名前に大社と付いていることは、かつて大社だったことを意味しない。
一宮(この地図に92社)・二宮(30社)
令制国——律令の時代に引かれた地理の区分で、全国におよそ70国あったとされる。その国ごとに最も格の高い社が一宮、次が二宮、三宮と続く。
この序列は朝廷が一覧を作ったものではない。国司が任地に着いて最初に参る社が、いつのまにか定着したもの。自然発生なので、国によっては一宮が複数あり、今も異説が残っている。
令制国の境は現代の県境と一致しない。だから地図で一宮を表示すると、分布が県単位で偏って見える。
旅行者にとっての使いどころはここ。知らない土地に着いたら、その国の一宮を探す。その土地で最も古く、最も重い社である可能性が高い。
名社
上の4つとは性質が違う。制度が決めたものではなく、このサイトが選んだもの。
神田神社、日枝神社、太宰府天満宮、八坂神社——どれも格式のどれにも当てはまらないが、その土地を語るときに外せない社。
これは編集判断であって、権威ではない。他の4色が過去にこのサイトの外で定まったものなのに対し、この色だけは現在の判断で動く。
最後に——格式は「良い神社」の順位ではない
一宮でない社が劣るわけではない。格式が示すのは国家との関係の強さで、信仰の厚さとも、境内の美しさとも、行って良かったかとも関係がない。
どれから訪ねるか迷ったときの目安。それ以上のものではない。
格式と混同されやすいのが系統。同じ名前の神社が、なぜ全国にいくつもあるのか。
系統——なぜ同じ名前の神社が、全国にいくつもあるのか
日本には約8万の神社があるが、名前の種類はずっと少ない。稲荷、八幡、天神、浅間——同じ名前が何千と繰り返される。なぜか。
答え=勧請(かんじょう)。神は分けても減らない、という考え方。総本社から分霊を迎えれば、そこに同じ神が宿る。コピーではなく、同一の神が複数の場所に同時にいる。この前提を説明しないと、以下がすべて理解できない。
| 系統 | 総本社 | 数の目安 | 何の神か |
|---|---|---|---|
| 稲荷 | 伏見稲荷大社(京都) | 3万社程度とされる | 元は穀物の神。中世以降に商売の神へ。千本鳥居は願いが叶った礼に奉納されたもの |
| 八幡 | 宇佐神宮(大分) | 4万社程度とされる | 応神天皇。源氏が武神として信仰し、武家政権とともに全国へ広がった |
| 天神 | 太宰府天満宮(福岡) | 1万社程度とされる | 菅原道真。恨みを鎮めるために祀られた神が、学問の神になった。もう一方の総本社は北野天満宮(京都) |
| 浅間 | 富士山本宮浅間大社(静岡) | 1,300社程度とされる | 富士山そのもの。噴火を鎮めるために祀られた |
| 住吉 | 住吉大社(大阪) | 2,300社程度とされる | 航海の神 |
| 諏訪 | 諏訪大社本宮(長野) | 2.5万社程度とされる | 建御名方神。国譲りで最後まで抵抗した神 |
| 春日 | 春日大社(奈良) | 3,000社程度とされる | 藤原氏の氏神 |
| 熊野 | 熊野本宮大社(和歌山) | 3,000社程度とされる | 熊野三山。中世の熊野詣 |
| 氷川 | 武蔵一宮氷川神社(埼玉) | 280社程度とされる | 関東の一部にしかない。系統には地理的な偏りがある |
| 祇園 | 八坂神社(京都) | 2,300社程度とされる | 疫病を鎮める神 |
数の目安は通説による概数で、一次資料には未照合。「約」ではなく「〜社程度とされる」という言い方に留めている。
神使——系統のしるし
神そのものではなく、神に仕える動物。同じ系統の社には、同じ動物が置かれていることが多い。社名は、この地図に詳細ページのある社。
系統は地図のフィルターにしていない。理由を正直に書く——系統が分かるには前に予備知識が要り、初めて日本を訪れる人の選択基準にならないから。代わりに、各系統の総本社はほとんどが格式でも高いので、上の表から総本社へ飛べば、そこから先は地図で辿れる。




